全仏女子シングルス1R 奈良2-1ドダン

はい、ローランギャロスの日本人選手の試合を結構チェックできたので
久しぶりに書きます。
初日に一番印象に残った奈良さんの話。


シャラポワみたいな長身ハードヒッター、
18歳のフランスの新星身長188センチドダンを、
身長155センチの奈良さんがらしいテニスできれいに逆転勝ちしました。
本当にすごかった。


ドダン、身長と身体能力を最大限に生かしてすべてのボールをハードヒットしまくる
破壊テニスです。
こりゃもう、シャラポワ級ですよ。
サービススピードも平均190キロ超えたりして、
錦織さんとあんまり変わらんというもう、
モノが違うってこういう人を言うのねって感じです。


ってことで、ファーストセット、
ドダンに普通のフォアハンドストロークも、バックハンドストロークも、
リターンでもどっかんどっかん強打されて、
奈良さんは手も足も出ずに2つブレークされて6-3で落としました。
見てる人たちはもう、こりゃもうライジングサンを
止められないよって感じたと思います。


ここでスタッツ見てみます。
ドダンはファーストセットだけでウィナーが18、エースが2で、
20点も決めポイントがあったんです。
アンフォーストエラーが16でダブルフォルトが4も同時にあって、
決めたのとミスが同数って感じです。
ほんと、パワフルですごい選手で、
見た目どうしようもないくらいな感じでしたけど、
数字を見ればミスも同居している、と言うのは分かります。
分かるんですけど、ファーストセットは奈良さん、
ブレークポイントは握れていません。


女子は3セットマッチなので、セカンドセットで流れを変えないと
一気に押し切られてしまいます。
実際、奈良さんはセカンドセット早々にブレークされて、
1-3まで来てしまいました。


けど、この辺りから、ドダンのフットワークがちょこっと正確さを欠いてきた感じが合って、
ショットのタイミングが合わないミスとかも増えていた感じもあります。
そういう時に、奈良さんがムーンボールを入れたりして、
とにかくドダンが打ちやすそうなリズムにしないようにやり始めました。


遅いボールをわざわざ打つのって、勇気がいるんですよ。
ちょっとでも浅くなると打ち込まれるし、遅い球打つのそのものも結構難しいし、
もしそれがアウトとかになろうものならメンタル的にもしんどいし。


でも、奈良さんは勇気をもってムーンボールを打ちました。
それも結構深くコントロールされてたし。
深く打つだけでなくて、さらにドダンのバック側に浅い目にムーンボール打ってみて、
ちょこっとドダンの読みを外した上で動かしてみたりとかしてました。


そしたら、セカンドセット後半から、
ドダンは目に見えて崩れてきて、奈良さんは結局セカンドセットで4ブレーク奪って、
7-5で取りました。
スタッツを見ると、
ドダンのウィナー+エースが14で、アンフォーストエラー+ダブルフォルトが26です。
これだとまず勝てません。
奈良さんはウィナー+エースが9しかないんですが、
アンフォーストエラー+ダブルフォルトも9しかない、
本当にミスの少ないテニスなのです。
奈良さん、相手の強打を拾って拾って、
その上でしっかり深くつないでチャンスをものにしました。
ファイナルセットは奈良さんがこのペースとモメンタムを守って奈良さんが取って、
奈良さんの勝ちってことで、内容は省略します。


ってことで、テニスの試合で勝つのに大事なこと
ウィナーの数<アンフォーストエラーの数だと、
どんなにいいボールを打っても勝てません。
テニスって、実はこれを競うスポーツ、と言っても過言ではないです。
我々レベルで言うと、試合に勝つためには、エースとダブルフォルトもここに入れて、
ウィナー+エース<アンフォーストエラー+ダブルフォルトだと負けるよ、
って言っていいかと思っています。
きれいなウィナーをどんだけ決めてもそれより多くミスると負ける、それだけです。
そのテニスの本質を分かって、奈良さんは勇気をもってやり切った、そういうことです。
粘るだけじゃなくて、相手のミスを誘発するようにつなぐ中でも相手の読みを外したコースに
ムーンボールを打ってみたり、
リターンエースの可能性もあるけど思い切ってバックにサーブ打ったり。
ってことで、日本人が大好きな「柔をよく剛を制す」みたいな試合を奈良さんはしたわけですよ。
これが男子なら闘牛のマタドールみたいだとも言えるんですが。
スタッツ見ると、ドダンのサービス、ファーストは平均190キロで、セカンドも170キロ超えてるわけですよ。
奈良さんはファースト150キロくらいでセカンドは130キロとかそんなもん。
それでも最後は奈良さんが相手の心技体すべてを凌駕して勝っちゃう、それがテニスなんです。


ってことで、どうすればテニスの試合で勝てるのか、
ということが非常に分かりやすい試合だったので、
この試合の映像を全国の高校1年生、
テニスはじめたばっかりのテニス部員に見てほしいですね。


さらに見習いたいところ。
奈良さん、最初劣勢だったし、本当にギリギリで返球しまくって自分の形で攻められなくて、
精神的にしんどかったと思うんです。体も疲れてたと思うんです。
それでも、疲れたそぶりを試合中全く見せませんでした。
実際は絶対に疲れてるんですが、
それ見せると負けと同等ってことが奈良さんは分かっていて、
ポイント間の振る舞いとかも最初から最後までほとんど変わらず、
試合が終わっても興奮している感じもありませんでした。
これをやり切るのは本当に大変なんですが、
自分の気持ちを相手にさらすのはデメリットしかないのでやり切るべきなんです。
特に、今回はフランスで試合してて、相手フランス人ですからね。
自分が弱気になったら、お客さんまでそれに乗ってきちゃいます。


ドダンも、18歳でプロの試合にあんまり出てない中で、
若い素質のある選手にありがちなうるさい感じがありませんでした。
ポイントとられても大声出したりしなくて、基本表情変えませんでしたし。
これは、ジュニア時代からかなりコーチングされて今に至っているのだと思います。
ジュニアは勢いを大事にして、喜怒哀楽を出したほうがいいとかいう人がいるんですが、
それだと大人になってからそれが理由で試合に負けるので、
テニスの試合をやる以上、こういうメンタルコントロールは最初からやるべき、
と私は思っています。
あと気になったのは、ドダンがセカンドセットで右手首痛いって言って、
メディカルタイムアウト取ったんですが、
出てきたトレーナーと話してるだけで、
これと言った治療をせずに試合再開になりました。
これ、もしかして流れが悪くなってきたときに試合止めて流れ変えようとしている、
いわゆるエナン作戦じゃないかとか勘ぐってしまいました。
だからと言ってメディカルタイムアウトを禁止するわけにはいかないし、
この問題は難しいですね。


最後、プロダクトの話。
奈良さん、アパレルは頭から足先まで、ラケットもすべてスリクソンです。
住友ゴム系の国内ブランド。昔のダンロップの国内企画ですね。
日本人が好みそうなウェア着てますよ。
スリクソンを作って売ってる会社の今の社名はダンロップスポーツ。関西系。
最近、町のテニスコートでもスリクソン率上がってます。
ストリングはダンロップスポーツが輸入しているバボラだそうです。
何使ってるかググれば分かりますが、調べません。
テレビで見た感じ、ナチュラルが横に入ったハイブリッドだと思うんですけど。


負けたドダンですが、
身長はシャラポワと同じだし、スリムさはシャラポワの10代のころみたいで、
本当にシャラポワみたいなんです。
アパレルもシャラポワと同じくナイキで、ナイキのワンピースが本当に似合います。
見た目もかなりかわいいし、このままいけば人気も出るだろうな。
本当に大物です。


長くなりました。
次、時間があれば、西岡さんとダニエル太郎さんのローランギャロス初挑戦に触れたいと思います。
あと、土居美咲さんも触れたいです。フォアでどんどん攻める土井さんらしい
もんのすごくいいテニスでした。
伊藤と添田は準備不足がありありだったのですっ飛ばします。
では。